真夏の食品工場で初めてスポット派遣として働いた時に感じたリアルな現場。

2019年11月22日ライフ

真夏の食品工場で初めてスポット派遣として働いた時に感じたリアルな現場。

工場派遣というとどんなイメージだろう。体験のない人にとってはイメージも何もできないかもしれない。チャップリンのモダンタイムスを見たことはあるだろうか。人間がロボットのように同じ作業をひたすらに繰り返す。気狂いだと思わないでほしい。低コストで多品種の商品を生産するにはそれが理にかなっているからだ。

私は工場に派遣として入ったことがある。少し当時の話をしようと思う。聞いてくれるかい?

私が初めて派遣された工場は魚介類を主に扱うところだった。電車に乗り、バスに揺られ工場に着くと入口で身だしなみの確認をされた。事前に派遣元から聞いていたこともあって無事入場許可がおりた。

身だしなみの確認が終わると社員が更衣室へと案内してくれた。鍵のかからないロッカーに荷物を置いて社員についていく。派遣の待遇なんてこんなもんかと私は現実を知った。それでも貴重品だけは携帯していいとのことだった。

生産加工現場の入口前に到着した。そこには白衣のような作業着がずらりと並んでいた。

「それでは自分に合ったサイズがあると思いますのでそれらを身につけて下さい。えーまずはじめに服は…」社員がそう言い指示をだす。

服、ズボン、帽子にマスク。初めてのことだったので私は戸惑いながら社員の言う通りの手順で着替えた。それにしても着るのが難しい。周りの派遣の人達はなんだか慣れているようで私が一番着替えるのが遅かった。

着替えが終わると衣服についたホコリをコロコロで絡めとり最後に決められた手順に沿って手を洗った。決まりごとの多さに驚きつつも、さすが食品工場だなと感心した。現場に入ると独特の空気と様々な音が私を迎えてくれた。当時は夏真っ盛りだったけれど工場の生産現場はそんなことは関係なく、冷んやりと少し肌寒かった。水色のゴム手袋をして、その上からアルコール消毒をした。

全体朝礼があり、現場監督が派遣組を振り分けていく。私の仕事が決まった。何に決まったと思う?そう、私の仕事は冷凍した蟹のむき身の仕分け。これに決まった。蟹のむき身が大量に入ったケースから適当に5,6本取り出しそれをトレーに乗せて測りに置く。数値を確認し決められた数値内なら合格で、合格した蟹入りのトレーはそばのケースに並べて入れていく。私の仕事はこれをひたすらに繰り返す誰にでもできる簡単な仕事だった。

蟹のむき身の仕分けをやっていると気がつくことがあって、「ああ、この大きさなら3グラムくらい重いな。」とか「ああ、この大きさなら一口で食えるな。」とかわかってくる。3時間も繰り返し同じことをしているとスピードも上がるしグラム調整もうまくなるし、調整しやすいむき身の形と大きさもわかってくる。

仕分けは一人でやっているわけではない。何人かで手分けして蟹のむき身をトレーに乗せていく。ケースには蟹のむき身がこれでもかと入っていて、その中でもグラム調整がしやすい蟹のむき身はみんなで取り合いになった。狙っていたむき身が取られると「ああ、私が狙っていたむき身なのに、私のむき身なのに。私のむき…」と一人心の中で呟き、肩の力が抜け一瞬ふぬけになってしまう自分がいた。それほど微調整しやすいむき身は貴重なのだ。私のむき身に対する熱い気持ちは伝わっているだろうか?

そんなこんなで一日が終わった。結局その日は蟹のむき身のトレー乗せをひたすらこなして終わってしまった。振り返ると現場の社員は派遣を完全に物のように扱っていた。人と接する態度でなかったのは間違いない。「下手に出ると舐められるぞ」とかわけのわからない会話を社員同士でしていたのがとても印象的だった。

スポットでの派遣だったのでこの工場とはこれっきりだ。誰かとたくさん会話する仕事ではないし、化粧やおしゃれが必要というわけでもない。目しか見えない作業着に身を包み社員の指示に従って黙々と作業が出来れば誰でもできる。一日中立ちっぱなしなのはちょっと足にくるけれど、やってるうちに筋肉がついて慣れるはずだ。

今回私が経験した仕事はライン作業ではなかったからトイレも行きたい時に行けたし、休憩も昼に一時間あった。ただ食品工場だったから衛生面は厳しかったし、最低限の清潔さが求められた。違う現場に派遣に行った時にピアスを外せなくて入場禁止にされた人を見たことがあるが、あれは辛い。就業規則や注意事項、担当者の話をよく聞いて現場に行こう。

もし食品関係の工場で働いてみようかなと思っているのなら、アドバイスをひとつさせていただきたい。「着替えは意外と時間がかかる。焦るな危険。」周りの人が早くても焦っちゃダメだ。自分のペースでいこう。魔法の呪文だと思って唱えてほしい。

※写真はイメージです。