【バス釣り】陸の上で暴れるそれは色こそ黒なれど、私の期待したそれとは違っていた。

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【バス釣り】陸の上で暴れるそれは色こそ黒なれど、私の期待したそれとは違っていた。

私がそれと出会ったのは小学生の時だ。学校の水槽にいたのを覚えている。黒くて長くて、でかい。なんだかカッコいい魚だとその当時は思っていた。

それから月日が経ち、そいつのことなどすっかり頭から消え去っていた頃、私は電車で少し行ったところにある一級河川にいた。釣竿を左手に握りしめ、魚を必死に探していた。

その川にはブラックバスがいるとのことだった。割と有名な場所だったけれど釣りをしている人はほとんど誰もいなくて、貸切みたいな状態だった。それにあの日は少し曇っていた。

私は川の下流から様子を見て回った。季節は中秋。生暖かい風から冷たい風へと変化するこの時期。川辺の草が枯色へと変わっていく。全く前情報なしだったので、とりあえず私は下流部に広がるテトラ周りを見て回った。しかしバスの反応は得られなかった。

私は中流へと歩みを進めた。近くにあるそれらしいポイントを巡るかたわら、試しに川の水を触ってみた。

思ったよりかなり冷たい。もしかするとワンド状になったところや温まりやすい所に魚が移動しているかもしれない。それよりベイトはどうだ。色々な思いが錯綜した。私は考えるのをやめてとにかく魚が止まりそうな場所を巡ることにした。

いくつか釣りのできそうなポイントを見て回りながら私は手頃なカバーにライトリグを入れていった。太陽はもう真上に来ていた。

釣りのできそうな場所を巡っているとすごく良さそうなポイントを見つけた。川の中央部へと張り出したテトラ帯。しかもテトラはそこしかない。これは川の流れを遮る避難所になる。そして何より深さがある。私はもうここしかないと思いを固め色々やることにした。けれどまずはテキサスで穴や穴周辺を探っていくことにした。

水温が低そうなことを肌感覚として感じていた私は軽めのシンカーを使いたかった。けれど流れもあるのでそこそこ重いものを選んだ。

私はテトラの穴や穴周辺にテキサスをピッチングで滑り込ませていった。あまり期待していなかったけれど慎重に誘いはいれた。

テキサスリグを何投かした時だった。ガツンというかなり強いあたりがきた。私はしっかり糸を巻き取り上顎を貫けるよう合わせを入れた。

掛かった。ロッドに重みが乗る。大きい。MHのロッドが弧を描くように曲がった。しかし引きが強い。穴に潜られては大変なのでやり取りは手早く済ませたい。20lbを巻いてきてよかったとその時少しホッとした。抵抗をみせる魚を強引に寄せて一気に抜き上げた。

水揚げには成功した。しかし陸の上で暴れるそれは色こそ黒なれど、私の期待したそれとは違っていた。予感はあった。ランディング中、バスではない引きと一瞬見えたシルエットがそれだ。

私が釣り上げたのは小学生の頃憧れた黒くてかっこいい魚。そうナマズさんである。この日釣り上げたナマズの体調は50cmを超えていた。すごく大きい個体ではないと思われたけれど、その時の私にはとてつもなくデカくて、それから強烈な何かを感じた。

私は魚が釣れた嬉しさとブラックバスではない悲しさの両方を噛み締めながらそっと元いた場所へナマズを返してやった。

その後も私はブラックバスを釣り上げるため釣りを続けた。けれどあたりはあの一回きりで何もなくその日を終えることになった。

私が川辺でしょんぼり帰り支度をしていると外国人の観光客が寄ってきて釣れたか?とか何とか聞いてきた。私は外国の人との会話の経験が少なかったためビックリした。それに数人で近くに寄ってきたので、私の釣具を奪いにきたのかとさえ思ってしまった。

あの日以来、なぜか私は外国人と話をしたいと思うようになった。フレンドリーな外人に声をかけてもらって元気が出たせいかもしれない。ただ本当のところはわからない。それでもこれまで全く関心のわかなかった英語の学習意欲に目覚めたことは確かだ。ナマズさんと外人さんに出会ったちょっぴり濃い一日だった。