【救急搬送】あの日私は職場で意識を失い救急車で搬送された。
【救急搬送】あの日私は職場で意識を失い救急車で搬送された。
あの日私は意識を失った。仕事中に倒れたのだ。途切れ行く意識の中で私は何かを見た。小さい頃高波に飲み込まれかけた、あの上も下も分からない感覚。それがフラッシュバックしたのかもしれない。
水の中にいるような周りが一瞬泡で包まれたような不思議な感覚。
次の瞬間、私は水辺に佇んでいた。いやどこか別の場所。すごく曖昧な記憶。
誰かの背中。誰だろう、男なのか女なのか分からない。顔は分からなかったがこちらを向いていた気もする。人なのか自分が想像で作り出した何か。分からない。それが私を呼んでいるような気がした。
私がそちらへ進もうと、いや分からない。正確なところは思い出せない。でも、もう少しここに留まろうとした瞬間。何かの感覚があった。次に声が聞こえた。
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」同僚の声。床で寝転がっている私の顔を同僚が覗き込んでいた。
一瞬自分がどこにいるのか分からず、何故私は寝転がっているのかと少し考えた。自宅でないことは何となくわかった。周りを見渡す。
「どれくらい意識がなかった?30秒くらいです。」同僚が上司と話している。
「大丈夫?救急車呼ぼうか?」その問いで気がつく。ここは職場だと。私は倒れたのだと。回らない頭で問いに答えようとしたが、様子を察して救急車が呼ばれた。
救急隊が到着し私は病院へ搬送された。意識ははっきりしていた。病院に到着し診察が終わった。頭は無事だった。けれど肺の手術が必要だった。私は以前ほど自分に期待していなかったけれど手術は受ける事にした。
手術は麻酔を使って行われた。気がつくと手術は終わっていた。
術後は痛みが続いた。けれど不思議と生きている実感があった。
今になって思うこともある。あのまま目覚めず、あの場所に留まることができていたらよかったのにと。けれど私はまだ生きている。
これから何かやらなければいけないことがあるのかもしれない。誰かと出会う必要があるのかもしれない。いや、別にそんなものは何もないのかもしれない。
一度死んだ。だから今はおまけの延長戦。道に迷った時はそう思うようにしている。
以前は光を探していた。必死に輝こうともした。でも違うのかもしれない。本当に探すべきはここでなら死ねるという自分の思う死に場所、死に様ではないかと。
たいそうな理由なんかない。生きた足跡が残ればと始めたわけでもない。でも今はこれが私の道しるべとなってくれている。
私はどこへ向かうのだろう。私はどこへ向かっているのだろう。