【バス釣り】絶対にいないと確信していた浅瀬にいた、これまでで一番の大物。

2019年1月5日ライフ

絶対にいないと確信していた浅瀬にいた、これまでで一番の大物。

もうずいぶん前の話になる。あの日は確か一人で釣りに出かけた。場所は少し離れた一級河川にほど近い農業用のため池だった。当時釣具屋がフォトコンテストを催していたのを覚えている。魚種ごとに釣った魚の大きさを競うコンテストだ。私はそれにビギナーだったがエントリーをした。それまで40cm以上の魚を釣り上げたことすらないのに。

釣りの腕を上げるためのモチベーションというか一種の危機感が必要だったのかもしれない。エントリー後はやはり、釣りに対する姿勢が変わった。大きい魚はどこに潜んでいるのか、どうやったら釣れるのか、自分はなぜ釣り上げられないのか。とにかく四六時中魚のことを考えるようになっていた。

釣りに出かけた一日一日が非常に濃かった。釣れても釣れなくても考えた。魚が釣れなかった日は特に考えた。釣り道具や魚の生態、ルアーの扱い方、キャストまで学べば学ぶほど自分に足りないものや必要なものが見えてくる毎日だった。

あの日はいつも通りクランクベイトから始めた。岸沿いに生えた雑草が水面を覆っている場所を丁寧に流した。水はマッディーだったので、クランクとは相性がよかった。同じコースをなんども通す。ボトムに点在するごろた石にルアーがコンタクトした次の瞬間、ロッドにあたりが伝わる。魚が食いついて来た。サイズは20cmくらい。幸先がよかった。

私は同じ場所でまた釣れないか何度かルアーを投げ入れた。けれどそれっきりであたりはなかった。私は場所を変えるため移動をした。池を回る中で魚が潜んでいそうなそれらしいポイントは一通り巡った。けれどあたりはそれっきりで手詰まりになっていた。

日が傾き始め、終わりが近づき始めた時だった。今日もこんなものかと私はカバーの絡んだ近場の淀みにバスベイトをおもむろに投げ入れ始めた。私はこれまでバズベイトで一匹も魚を釣ったことがなかったけれど、ガチャガチャとペラで水を動かすあの動きがなんとも楽しいので気分転換によく投げた。

この日もそうだった。最後に楽しい気持ちで釣りを終えたかったのだ。散々他のルアーで叩いたその淀みは非常に浅く魚が潜んでいるとは到底考えられなかった。少々うるさくしても別に問題ない。私はそう思っていた。

バズベイトはトップウォータールアーにカテゴライズされてはいるけれど、決して常時浮くルアーではない。リールを巻く手を止めると水に沈む。巻くと浮き上がり、一定以上の速さで巻くと水の上でガチャガチャと音を立てながら進む。バズベイトの基本は潜らせない。潜らせないようキャスト後すぐ巻き始める。これが基本でありこの使い方が一般的になっている。当時の私もそれが正しい使い方だと信じていた。

バズベイトを淀みへ何投かしている時、ふと思った。「バズベイトを潜らせた状態でも音は水の中に響くのだろうか。」答えは多分YESだと思った。あのうるさい音が水の中で響かないはずがない。私はバズベイトを少し沈めて使ってみることにした。でもやっぱりというか、やはり釣れる気はしなかった。こんな使い方は聞いたことがない。

私は立ち上げ時だけこれをやってみてはどうだろう。と考えた。この方法なら別に焦ってリールを巻く必要はなくなるし、狭いスポットならこっちの方が魚にルアーを長く見せられそうだと思った。そんな風に考えながらルアーを投げていると不意に強い力がロッドに伝わって来た。グッと重たい何かだ。気がつく間も無く私は合わせの動作をとっていた。何かに対して体が反応していた。

何かはただ重たかった。魚ではないような、木か捨てられた土嚢を拾ったのかもしれない。距離にして約2m。ゴミやウッドを引き上げたことは何度かあった。やり方は分かっている。ロッドをしっかり握りぐいーと引っ張って、リールを素早く巻く。そしてまた引っ張って巻く。それの繰り返し。けれどこの日の何かはそれとは違うような生命感があると私の体は感じていた。だからラインのテンションを緩めようとは思わなかった。

それが水中からやっと顔を出した。木やゴミではない。ルアーに掛かった何かは、なんとブラックバスだった。私のルアーを口に加えて暴れることなく、ただただ私に引っ張られていた。これまでみたことのない大きさだった。興奮と動揺が急に押し寄せてきた。絶対にいないと確信していた浅瀬にいたのだ。これまでで一番の大物が。

魚と目があったように感じた。動揺する私に気がついたのかそれとも最後の抵抗かどちらかは分からない。バスが急に暴れ出した。もうあとは捕まえるだけという距離だというのに。私は気を引き締め直した。手にする直前までが勝負なのだ。これまでの経験から私は学んでいた。絶対にバラすわけにはいかない。

暴れる魚をいなし私はついにバスをその手に掴んだ。バスを掴んだ手が重さと興奮で少し震えた。みただけでわかる。これまでで一番の大物だ。私は早速魚を計測した。サイズは口閉じで50cm。この池の規模からすると主と呼んでも過言ではない大きさだった。

これ以上の魚を残りの期間で釣りあげるには到底無理だと思った私は、この魚を写真に納め、フォトコンテストに応募した。私が参加したフォトコンテストは魚が同サイズの場合、釣り上げた順番、つまりは写真を提出した順で決まる仕組みだった。フォトコンテスト終了までは残り二ヶ月ほどあった。もしかしたら10位以内いけるかもしれない。そう思って少し期待が膨らんだ。

結果発表から数日たった日、私は結果を確認するため釣具屋を訪れた。ドキドキしながら結果を確認した。もちろん上から見ていった。けれど私の名前は全く見当たらなかった。それにサイズも私が釣り上げたのが小さく感じるくらいみんな大きい魚を釣り上げていた。それでもめげずにじっと見ていくと70位くらいに私の名前が記載されているのを見つけた。順位は高くなかった。でも自分の名前を確認して何故かほっとした。釣りをして他人から褒められたことなんてほとんどなかった自分が初めて認められたような、否あの魚と出会えたことへの感謝だったのかもしれない。悔しいけれど嬉しい。そんな不思議な気持ちが込み上げてきた。

五月下旬の懐かしい思い出。