【バス釣り】高校1年の秋。新たな友と衝撃の魚に私は出会った。

2019年1月5日ライフ

【バス釣り】高校1年の秋。新たな友と衝撃の魚に私は出会った。

気がつけば高校生になっていた。小さい頃に持っていた自信やプライドは、数ある制約と理不尽な外的圧力によって砕かれた。変わりに生まれたのが、拙い処世術だった。

相手の顔色を伺ってはビクビクし、嫌なことをされても笑って耐えた。時には自分を守るため誰かを傷つけたし、強いものには逆らわず、助けを求める誰かを平気で見捨てた。

全ては自分の立場と環境を守るためだった。でもそんな自分が嫌いだった。変わりたかった。幼き日の自身に満ちたあのキラキラに戻りたかった。

出会いは偶然だった。知り合いのつてで隣のクラスに釣りが好きな子がいるとの情報をもらった。あまり期待はしていなかったけれど、とりあえず声だけかけてみることにした。

もう記憶が曖昧になってはいるが、体育の合同授業の時だったように思う。授業の合間に私は自己紹介をした。自分が釣りをしていること、釣りに興味がある旨を伝えた。反応はよかった。

話を聞いていると、どうやら彼はとても釣りが好きらしく、特にルアー釣りが大好物とのことだった。けれど、いつも通り相手への警戒だけは怠らなかった。

細心の注意を払いながら、言葉を選び謙虚に振る舞った。相手がどのような人脈を持っているか謎だったし、突飛な振る舞いは狭い学校の中では自殺に等しかった。これまでの経験から私は学んでいた。

彼と話をするうちに近いうちに一緒に釣りに行こうということになった。近所の釣具屋で待ち合わせをした。私が先に到着した。待ち合わせの15分くらい前についた。いきなり遅刻では印象が悪すぎる。

数分後に彼も到着した。彼の到着も早かった。颯爽と現れた彼はこれまで見たことのない本気の釣り道具セットを携えていた。整った顔立ちがそれを一層引き立てた。私は敗北感に包まれ、自分の立場を理解した。より一層謙虚に振舞うことを心に決めた。

少し話をして、私の知らない池があるとのことで、そこに今日は行くことになった。

「そうだ。これあげる。」池へ向かう前、彼は手作りのミサンガを私にくれた。殺伐とした食うか食われるかの環境にいた私にとって、彼は自分の許容を明らかに超えていた。

私は友達になれたような気がして嬉しかった。けれど謙虚に振舞うことに迷いはなかった。

池はそんなに遠くなかった。池は山間部にあり、水は濁ってくすんでいた。イノシシが出没する池ということでシシ池と彼は呼んでいた。竹藪が池を覆い、今にも動物が藪から飛び出してきそうな雰囲気だった。

彼は釣り場に到着するなりタックルを組み始めた。シマノ社製のリールから糸を引き出し、ガイドへ糸をスルスルと通して行く。タックルボックスにぎっしりと詰め込まれたルアーを眺めながら、彼はルアーを取り出す。

ガチャガチャとルアーの擦れ合う音が静かな森に響いた。

私は彼がタックルを組む姿を横目に初心者釣り具セットを恥ずかしそうに取り出し、ぎこちない手つきでルアーを結んだ。

タックルのセットが終わったところで私たちは水辺に降り立った。キャスト範囲は山間部の野池の例に漏れずやはり限られていた。

「先に投げていいよ。」彼は私に言ってくれた。

私は人前で釣りをする経験がほとんどなかったので、緊張していた。うまく投げられるか不安だった。それに場を荒らしてしまって迷惑がかかるのが嫌だった。だから彼に先に投げてもらうことにした。

私は彼が釣りをする様子をしばらく見ていることにした。彼のキャストは驚くほどよく飛んだ。小さい池ではあったのだけれど、彼が投げたルアーは反対側の岸辺まで届いていた。

緩やかに巻くリール捌きも見事だった。ひたすら関心していると、「どうしたの?投げないの?」と彼が聞いてきた。慌てて、私はルアーを投げた。もちろん控えめにだ。釣り場を荒らすのだけは避けたかった。

何度かルアーを投げていると、彼の竿が大きく曲がった。どうやら魚がヒットしたらしい。私は釣りの手を止めて見守ることにした。けれど、どうしたことか魚がなかなか上がってこない。彼と二人で顔を見合わせた。彼のロッドは依然として弧を描いていた。足元近くになってやっとその正体が判明する。

それは私たちの目の前に突如として現れた。黒い尾ひれに黒い背中、大きな口にルアーを加えていた。

彼が釣り上げたのは口閉じ尾平きで49.5cmあるブラックバスだった。私はこんな大きな魚が池に生息していることに驚いた。そしてこんな大きな魚がルアーに食いついてくることに衝撃を受けた。

彼が使ったルアーはメガバス社のZ-CRANK。色はチャート。なぜかわからないけれど、これだけは正確に覚えている。ステインウォーターならではの衝撃だった。

それから私たちはいくつか池を回り、釣れる場所で釣りをした。私は今日まで、バスを一匹しか釣ったことがなかったけれど、この日は彼のアドバイスに従って、ルアーだけでなくワームを使ってバスを誘った。結果、30cm位のバスを1匹と18cmくらいのを4匹釣ることができた。こんなにルアーで魚が釣れたのは初めてだった。

彼はその後も釣り続け、15cm〜30cmくらいのバスを20匹以上釣りあげていた。日が傾き出したのをきっかけにその日は竿を納めることとなった。帰り道ではその日最初に彼が釣り上げた大きなブラックバスの話で盛り上がった。「あの魚でかすぎ!!でかすぎ!!」とかなんとか言って二人で笑った。

私はこれから何かが変わる、変えられる、そんな気がした。