【バス釣り】あの夏の日の初バス。

2019年1月5日ライフ

【バス釣り】あの夏の日の初バス。

高校に進学し部活と勉強と人間関係の三重苦に私は、悩まされていた。中学時代の釣り友達とは進学先が異なった為、疎遠というわけでもないのだが交流する機会も少なくなっていた。私には癒しが必要だった。

私は暇を見つけてはバス釣りに出かけた。私は中学時代からバス釣りを続けている。けれどこれがからっきしで、未だに一匹も釣れたことがない。

そもそも自分の頑ななこだわりがそれを邪魔している。そんなことは当時から重々分かっていたのだけれど、唯一の自分の領域を捻じ曲げることだけは許せなかった。

高校1年の夏休み。苦しい部活の練習が終わった後、私は一人で釣りに出かけた。山間部のいつもの池に私は向かった。

夏の日差しが燦々と水面に反射し木々の影が岸際の水面を暗く染めていた。水はいつも通り澄んでいて、ブラックバスが泳いでいるのがよく見えた。私は思い思いのルアーを池に投げ込んだ。中学から釣りに行くたびにルアーを投げているだけあって、ルアーの扱い方や特性は体と頭が記憶している。

私はルアーを動かすのが好きになっていた。いろんな形のルアーを投げて巻いて動かして操作するのがとても楽しかった。

日没も迫り、空の色が茜色へと変わり出す。今日も釣果はゼロか。まあ仕方ないか。と思っていた時だった。サワサワと風が吹き始め、水面が少し波立った。

私はポッパーを選び、波立つ夕暮れの水面へ投げ入れた。ポッパーの動かし方は分かっていた。リールを巻いて糸の垂らしを少なく、竿を軽く煽って音を出す。

「カポッ。」やっぱりポッパーのだす音は最高だ。波紋が消えるのを待ってもう一度。繰り返す。バスからの反応はない。

狙いをよりタイトにすることにした。木の枝にルアーが引っかかる恐怖と戦いながら、一際暗い岸際ギリギリにルアーをキャストする。何度か失敗した後、かなりいいコースにルアーが投げ込まれた。

波紋が消えるのを待って、ルアーを動かす。「カポッ。」ポッパーの動く音が森に木霊する。 あたりは暗く、水面の様子はもうよく見えない。これ以上粘るのは、非常に危険だと、動物的感が囁く。

「ガポッ。」暗がりの池に不自然な音が響いた。ポッパーに似た音だったけれど私はポッパーを動かしていない。不思議に感じていると竿を何かが一瞬引っ張った。まさかと感じて私はおもむろにリールを巻き出した。

軽い。だけど何か引っかかっている感触がある。期待と不安を感じながら私はリールを巻いた。 手元まで寄せて、暗がりの中じっと見つめると小さなバスがポッパーに食らいついていた。

普段なら一目散に逃げ帰りたい暗がりの森で、緊張の糸が切れたように、私は喜びと嬉しさで頭がパラダイスになった。心臓の鼓動は周囲に響き渡りそうなくらいバクバクと音を立てていた。

数分たち正気を取り戻した私は、早足で森を後にした。この時の余韻は一週間ほど続くことになる。はじめてバスを釣ったあの夏の思い出。